お題 セーター
今時珍しいな。手編みのセーターをプレゼントする女とは。
濃紺と明るい紫の糸が織り込まれて、あたたかみのあるセーターだった。
「紺と紫は高貴な方の纏う色なんだよ」
その女は可愛らしい笑顔でそう言った。
「高貴なのか?オレそんな奴じゃないぜ」
それでも女は眩い笑顔で微笑みかけうんと頷いた。
だが1年と経たずに、女はオレの元を去っていった。
オレとは気が合わなくて、他の男に取られてしまった。
女の重たい想いが詰まったセーターを残して……
そしてそのセーターを捨てられないオレだった。
もうオレが着る事は無いのに……
11/25/2023, 9:54:45 AM