不完全な僕
「うーん、また血圧が高いな」
300オーバーとは困るな。そう零しつつ血圧計を外す。
今の僕は上半身に着るものをはだけて、椅子に座っているところだ。
上半身に見えるのは肌ではなくカバーが見えて、それが開いた中身は、内臓や筋肉の代わりになる機械が詰められている。
僕はロボットだ。それもポンコツの。
僕のことを作った博士は、人間に溶け込むロボットを目指していたらしい。
見た目も挙動も体温や心音までも、人間そのままになるように作る予定だったという。
しかしどうやっても血圧が高くなってしまうのだ。
何度も試行錯誤を続け、とうとう博士は倉庫に僕を仕舞い込んだ。
倉庫の中は暇で暇でしょうがなかった。飽きた僕はとうとう自分で自分を改造し出した。
色々弄ると、体温ががくりと下がったり、冷却剤が零れてしまったりとトラブル続きだった。
それらをなんとか乗り越えて、当初からの難問である血圧に挑んでいるのである。
「もう少し弁の威力を落とした方がいいだろうか?」
擬似心臓を調節しつつ呟いた。自分がポンコツなのは事実なので悲しくはないが、暇が続くと『悲しく』なるのだ。だから意味の無い実験を繰り返している。
不完全な僕は完全を目指すあまり、不完全なまま外に出れることに気が付かない。
博士の残した難題にしがみついている。
8/31/2024, 2:21:55 PM