まるで修行中

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「あ、もう衣替えか」
という季節感がなくなってきたこの頃、昔を顧みると、10月1日には、一斉に冬服姿で登校していた。
今では、夏でも長袖のブラウスを着て袖をまくっている生徒を見かける。
セーターを着ている生徒もいる。
教室には冷房が効いているから、とか、ファッションとして格好いいからとか、様々な理由があるらしい。
自由。
個性。
個人差、ということだろうか。
テレビなどで流れる天気予報で気温と、服装指数なるものも確認する。
男は世間の変わり様に時の流れを感じた。
ふーう、と長くため息をついた。
いつからだろうか。
寒さも暑さも、体温すら感じなくなったのは。
それと同時に誰からも気づかれなくなった。
「俺はここにいるのに」
人肌の恋しさは日に日に増すばかりだ。
ある日、デパートのトイレに入り手を洗った。
その時にふと鏡の中の自分に触れた。
それからだ。
どうやら俺は鏡と入れ替わってしまったようだ。
今まで他人に興味を持つことはなかった。
それなのに、今ではいつでも他人を見なければならない。
自分の姿を様々な感情で見つめているところは、見られたくないだろうなあ。
俺は嫌だ。
目をそらしながら、ちらりといろんな顔を見る。
少しでも温もりが欲しい。
誰でもいい、気づいてくれないだろうかと毎日、願っている。





「衣替え」

10/23/2023, 9:33:15 AM