13歳!

Open App

『先輩!』

ベンチに座っている先輩は黒色の綺麗な髪を靡かせながら
私の方に振り返り返った。

春風先輩には本当にお世話になった。
春風先輩は、本当に優しく、頼れる存在で、安心感があって、どこか掴み所がない。
春風先輩と出会ったのは今と同じ、桜が舞う中庭だった。あの時の目は死んだ魚よりも死んでたと思う。
シングルマザーなのに、良い高校にいれて貰って、
お母さんには、本当に感謝してる。
だから将来的には楽をされてあげたい。
だけど、その時高校入りたての私は馴染めずにいた。中学生の頃からこうだ。私は不登校だった。特に理由も無いのに学校に行けず、それが故に自分を責め、命を絶とうとした。
だが、通行人が命を懸けて助けてくれた。
どうやら病弱だったらしい。
悲しみよりも、罪悪感よりも、ショックが大きかった。礼儀として参加させられた、その人の葬儀では、ゴミを投げられ、胸ぐら掴まれ。
でも当たり前だと思った。私が殺したも同然だし、
それに、その時にはもう私は何も感じ無くなってたから。
私はこの時、選択せねばならなかった。
この人を殺した罪の償いとして、もう一度彼処に絶とうか。それとも、この人が死んで守った命を守り抜こうか。
……前者だな。
そう思っていた。罪を償いたかった。いや実際はもう生きたくなかった。
だが、それすら否定する物も出てきて。
死にたい。苦しい。嫌だ。忌まわしい。変えたい。悔しい。何で?
そんな思いを覆される事無く、生きさせられて、
正に生き地獄だった。縁のあった通行人もシングルマザーのお母さんも、私には一生鍛錬しても解けない魔法を気軽に掛けたのだ。
高校に行っても、私から話し掛ける事が出来なくて、話し掛けてくれた子とも上手く会話できなかった。
まだ桜がギリギリ散りきってなく、桜の花弁がお母さんの作った弁当に入ってきていた。
ベンチに一人で座って
これからのことを考えて居ると涙が溜まってきて、抑えようとしても抑えられない。
ここで泣いたら更に浮いてしまう。
そう思ってそれを避けるべく、立ち上がると
すぐ前に、優しく微笑む春風先輩が立っていた。
綺麗な黒色の髪を靡かせて、その風にのった花弁が春風先輩を女神のように仕立てたたていた。

こうやって春風先輩との出会いを事細かく思い出していると
わんわんと泣きたくなってきた。
だけど、涙は堪え、流さない。
そう昨日に決めた。
だから笑顔で、
『春風先輩、ご卒業おめでとう御座います。』
そう、言った。
これでもう、春風先輩とは会えない。
そんなこと考えると涙が出てしまうから、考えないようにした。
すると、春風先輩は
『泣いて良いんだよ』
と優しく目を細め、安心する笑み、あの時と同じ笑顔で、あの時と同じ言葉を言った。
私は、大粒の涙を流しながら、
『先輩も、泣いて良いんですよ』
と言った。
先輩は目を一瞬見開いて、すぐに私を抱きしめて静かに涙を流した。
『ありがとう』
違う。それは私が一番言いたいこと。


私は知っていた。
春風先輩は、この先短いこと。
だけど、今回は選択肢は1つしかない。
それはとても辛い事だけど。
春風先輩に死んで欲しくないけど、言いたいこと、いっぱいあるけど、直ぐにでも入院して長く生きて欲しいけど、いろんな事がごちゃ混ぜになって涙がとまらないけど、決心して進まないと行けないんだ。私は涙をぐっと堪えて、一定テンポ遅れて返事をした。
『私の、台詞です。』
来世でもまた、いつか会いましょうね



『お題/また会いましょう』



11/13/2023, 11:56:30 AM