一面緑の草原に立っていた。
小さな丘の上に白いイスがひとつ
君が座っていた
私も君も目を合わせて悲しく笑っていた。
風が優しく。でも、静かに吹いていた。
私たちの感情のように。
それから君はこっちを見ず
ただ同じ景色の並ぶ草原を眺めていた。
私はただ君を見ていた。
遠くを見つめる懐かしい君の横顔を
夢だと分かっていた。
それでも目に焼き付けたかった。
忘れないように。
いつの間にか草原が花畑になる。
てんとう虫がすぐ下の花に止まり、上を目指す。
てっぺんに着くとまた飛んだ。
それを見届けたあと彼の方を見ると
彼はもう居なかった。
それからてんとう虫を見る度に思う。
君はてんとう虫になったんだと。
9/17/2021, 10:57:30 AM