風音

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数年前、健康診断で癌検査に引っかかってしまった。
大丈夫、…多分。
地元の大きな病院へ検査をしてもらう事にした。
運良く早めに予約がとれた。
初めての部分麻酔。しかも癌検査。
只、看護師さんは優しく手を握ってくれ、医師の形も誠実そう。
採血や注射時に相手泣かせの私の血管。
なかなか血管が浮き出ず辛うじて右腕が浮き出やすい為右腕でするが、今回は諸事情で、手の甲。
手の甲で採血した方は解るだうが物凄く痛い。
しかし、この病院、痛くない。腕がいいんだな。
検査が終わり、麻酔もさめ、帰っていいですよ、お大事に。ホント、体は大事にしないと。

帰り時雨。しかも、これでもかって位の大雨だ。
私は車だから濡れずにすむが、視界も遮る、ワイパー大活躍中!な程の雨降る時の運転はあまり好きではない。
一向にやまない雨。
嗚呼、まるで検査結果が悪いよー泣くよーと、言っているみたいだ。
いやいや、これは祝福の雨だ。と言い聞かせても私の気持ちも空も晴れない。

海岸線にさしかかると、歩道になにやら動いている。低い位置。
あ、猫だ!
猫は、降り注ぐ雨もなんのその。前を見据えてしっかりと歩き進んでいた。
その姿のなんと、凛としている事か!
人間なら何処かで雨宿り、やむのを待ち、傘があるのに濡れるの嫌と、怨めったらしく空を見ている。
猫は本来、水が、苦手。
なのにあの猫は、ずぶ濡れになりながらも、惨めに見えず、あー、仕方ないわよ、と受け入れて歩く。
まるで、モデルだ。ランウェイを歩くモデル。
もしくは、レッドカーペットを歩く女優。
その姿に私は見とれた。勇気をもらった。
猫は雨宿り出来そうな所もスルーして歩き続けていた。
私の車は猫を追い越したがミラーに映る姿、小さくなっても、猫は、ずっと歩いていた。
凛としながら。


お題
雨に佇む
(お題から逸れている様な気もしたけど、どうしてもあの時の猫が浮かんで…。長文になりましたが、読んでくれた方、感謝します。尚、癌検診は陰性でした)

8/28/2022, 1:35:51 AM