唯の虜

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【夜の海】




『ここで何してんの、』



私に声をかけてきた貴方 



「別に。何にもしてないけど」


嘘。


気づいて欲しい


 
『ふーん。そっか』



貴方はずっと星を眺めていた



『じゃあ、なんで急に僕から離れていったの』



貴方のキラキラと光る目は、夜の闇のせいか、何も持っていない、私が大嫌いな人間の目をしてた


その目には愛情も、信頼も、全て何処かへ置いてきたんだね


「なんとなくだよ。」 



なんとなくな訳ないじゃない



「それに、私じゃなくて、貴方が最初に離れていったのよ」



波音が心地良い


こんなことになるなら最後くらいキスでも何でもすれば良かった



『そうだった』



『あの時はごめんね』



『もう僕も怒ってないから』



「それなら良かった」



心の底から安心した



これで私も深い眠りにつける



『だからさ、もう夜の星にでもなって、僕を見ててよ』



『そしたら君はもう満足なんだろ?』



満足なわけないじゃない


でも、嘘でもここは満足と言わなきゃ言けないのよね


貴方の為なんだから



「えぇ、満足よ」  



早く新しい人見つけなさいよ



じゃないと、貴方の記憶から私が消されないじゃない




『じゃあ、バイバイだね。』




私は小さく頷いた



私の人生早いものだな、と感じながら




そして私は、君の横顔を眺めながら波に体を委ね、
夜の海となったのでした。







8/15/2023, 11:37:56 AM