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「久しぶり。元気してた?」

自宅の玄関前に突然現れた、よく見知った顔。

「元気してた?って…こっちが聞きたいよ。今までどこに行ってたの?」

高校の同級生である彼は、突然消息を絶ったまま、もう5年ほど経っていた。

「ちょっと…まあ、色々あったんだよ。」

彼は苦笑いしながら、言葉を濁す。
ベージュのダッフルコートに、落ち着いた赤色のマフラー。少し癖のついた黒髪。
5年という月日を感じさせないほどに、彼の姿は"そのまま"だった。

「色々、って…まあ、とりあえず入りなよ。聞きたいことは山ほどあるし。」

そう言って私は、彼を部屋に招き入れようとする。

「いや、ごめん。それはできない。これから行かなきゃいけないところがあるんだ。」

そんな、せっかく久しぶりに会えたのに。と私が言う前に、彼は続ける。

「君に渡したいものがあるんだ。」

そう言って彼は、右手に持っていた白い紙袋を差し出した。

「ありがとう。これは何?」
「…後で開けてみて。」

一体なんだろうと紙袋を眺めていると、彼が言う。

「元気そうでよかったよ。それじゃあね。」
「え、待っ──」

顔を上げた時、彼はもうそこにはいなかった。

紙袋に入っていたのは、彼と私が写った数枚の写真と、メッセージカード。
そのカードには、彼の字で、『今まで楽しかったよ。ありがとう。』とだけ書かれていた。

友人づてに、彼が亡くなっていたと聞いたのは、その3日後のことだった。

8/28/2023, 3:48:01 PM