降りしきる大粒の雨が、窓ガラスに当たってバチバチと音を立てる。
ひどい嵐だ、と独りごちるあなたの声が、ほんの微かに聞こえた。
ふと、外がパッと白くなり、少し遅れて空を割るような轟音が鳴った。元来雷が苦手な俺は、思わず肩を震わせ硬直してしまう。でも、その時には既にあなたが俺の隣にいて、雷光から守るように肩を抱いてくれていた。
俺はいつもこうだ。弱くて、あなたに守られてばかりで。あなたはそれでいいと言うかもしれないけど、俺は自分が情けなかった。
俺は昔から要領が悪く不器用で、何一つ成し遂げられなかった。俺のような不出来な人間に、世の中は優しくない。そうして俺は世界を恐れて、でもどうすればいいのか分からなくて、ただ降りしきる雨風に身を震わせるしかなかった。
そこにあなたが、傘を差してくれたんだ。温かい家を用意して、寒い思いをしないように匿ってくれた。あなたのおかげで、俺はもう濡れて凍える必要はなくなった。
でも、俺は知っている。その温かい家を直すために、あなたが時々寒い外に出て、雨に降られていることを。あなたはそれを俺に悟られないように隠しているし、例え俺が追求しても「平気だ」と笑うのでしょう。そしてまた、何食わぬ顔で外へ出て行く。俺を家の中に残したまま。
俺が弱いせいで、あなたにばかり寒い思いをさせてごめんなさい。
いつか、俺はあなたと同じくらい強くなります。
たとえ嵐がこようとも、立ち向かう勇気を手に入れます。吹き荒ぶ雨風や雷に、耐えうる術を身に付けてみせます。
だからその時は、その役割を代わってくれませんか。
今度は俺が、あなたを守ります。
【お題:嵐がこようとも】
7/29/2024, 2:11:44 PM