亀に連れられ着いた竜宮城は、言葉にできないほど残酷だった。
「魚どもが!!まともに踊るくらいも出来ないわけ?コイツ、もう料理にしちゃいましょ」
悲鳴が聞こえる。恐ろしさに震える。
「…いつも、こんな調子なの?」
恐る恐る聞くと、亀は身震いひとつし
「はい、そうにございます。お助けくださいませんか?」
ぶるぶると震え、縋るように俺を掴む。俺は、意を決し、怒声の聞こえる城の、扉を開けた。中には血だらけにされた魚たち、瀕死の小さな生き物たち。そして、なにより恐ろしかったのは、乙姫の姿。美しいその顔に血を散らし、睨みつけていたであろう目元には怒りじわ。慌てて取り繕うように顔を拭い、笑みを浮かべる。
「あなたは、私の亀を助けてくれたの…」
「お前がしてることは間違っている。」
「あら?なんのことでしょう?」
尚も知らない風を装う乙姫を、思わず俺は殴ってしまった。そして、乙姫が落とした包丁を拾う。
「な、なにをされるのですか?おやめくだ…」
「お前に包丁を向けられた魚たちは、どんな気持ちだっただろうな。」
「な、なんのこ…」
苛立ちに任せ、怒声を上げる。
そこからは、記憶がなくて。気が付けば乙姫は血だらけで倒れていた。わきから亀が近づく。
「完全に、死んでおります。やりました…!!やってくださいましたよ…!!」
大喜びで、魚たちが声を上げる。
「ありがとうございます!!なんとお礼を言ったらよいか…!!言葉にできないほど、感謝でいっぱいにございます!!」
喜ぶ魚たちを見て、俺はほんとに正しかったのか。それで頭がいっぱいになった。
ー残酷なのは、俺なんじゃないか?
4/11/2024, 10:49:26 AM