NoName

Open App

「お母さん…」
涙をこらえながら、震え声で言う。

病院に、お父さん、弟と来ていた。

病弱なお母さんは、病にかかり入院した。


すぐに治ると思ってたのに。
どうしてーーー



「お母さんっ…」
涙がこらえられなくて、大粒の涙がいっせいに流れる。

「そんな顔、しないで…」

「お母さん?」


「最後くらい、笑って、ほしいの…」

笑顔でお母さんを見るけれど、やはり涙が止まらなかった。

「ねぇ、死んじゃうの?ねぇ、寂しいよ…」



「わらっ、て。」

ぎゅっ、と、私の手を握りしめる。

あぁ。


お母さんの手だ。


温かくて、優しい手。


「お母さん…」



私もその手を握り返して、静かに微笑んだ。


そして、母は息を引き取った。



私と、
手を繋いで。

12/9/2024, 10:55:34 AM