名刺代わり

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「あと少しで今年も終わりか。」
今年最後の大掃除をしながら、ふと感傷に浸った。

朝から掃除を始めて、そろそろお腹が空いてきたところだ。
ここを掃除したらご飯を食べよう。と、固く決意し、まだ掃除を終えてない本棚を見た。

それから1時間がすぎていた。
ヤバい、何一つ掃除が終わってない。
いつもそうだ。 掃除を始めようとすると懐かしいアルバムや懐かしいマンガなんかを読み始めてしまう。
流石に掃除が終わらない と、思っていたら懐かしい交換日記が出てきた。
もう少しだけ……と中を覗いてみると、正月の話題が書いてあった。最後の一行に
「みんなは、どんな1年でしたか?」
と綴られていた。

どんな1年………。と、今年の自分を振り返ってみた。

有名なバンドマンになりたいという夢を叶えるため上京したはいいものの、音楽スタジオを借りるお金が無く、毎日ひたすら路上ライブをやるしか無かった。
そのうち人が増えてきて、ある有名なサイトでもプチバズりを起こし、「ここからが俺の時代だ!!」と思った時に美人局(つつもたせ)の被害にあった。
あれよあれよという間にお金を失い、一時期俺は人を信用できなくなった。

と、いう感じでとにかく濃い一年だった。

人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま)。というものなのか。人生は全く何が起きるか分からない。
と、そんなことを考えていたら、とても見覚えのある黒い袋を見つけた。
袋の中に入っていたのは本2冊。ただそれだけなのに、なぜか身震いが止まらない。袋の中に入っていたレシートの確認をする。

「嘘……だろ…。」

テンプレの驚き方をしながら、オレは膝から崩れ落ちた。それは、約三ヶ月前に俺がとあるレンタルショップで借りた漫画だった。

12/30/2022, 11:55:46 PM