俺は「ただのエース」じゃなくて良かった。
しょぼくれた時の「スパイク練しますか」と聞いたときのあの瞳を、多分俺は忘れない。
しゃがんでいた彼が、「スパイク」という単語を聞いて、飛び上がるようにばっと顔を上げたときの、体育館の天井にある眩しいライトを全て吸い込んだような瞳。
眩しいライトさえ瞳に閉じ込めてしまっては、今ではあまりみなくなった天井サーブくらい、彼が眩しすぎて見えなかった。
そんな彼に、俺はトスを上げているのか。
そう思うと多少の優越感を感じ、それと同時に自分の烏滸がましさを感じる。
"高校ナンバーワンセッター"や、1年ながらユースにも選ばれている"王様"とやってみたい、とか思ってそうなのに、彼にしては珍しい頑固さで、それを聞いたときは全否定された。
「やっぱもっとみんなとやりたかったな」
なんなら俺たちとやるバレーが一番楽しいんだ!なんて表情で、でもどこか寂しそうで、彼の背中にあった「尽瘁」も「日射」も、手の届かない所へ、遠くへ行ってしまったみたいに。
この人には"そういう"ところがある。
俺たちに大きな「信頼」を預けておいて、俺たちが「期待」してしまったら助けてくれる。
それがどんなに時間がかかっても、難しくても、無理だと思ってしまっても。
「無理だ」と思うのは、「楽」を選ぶのは、確かに間違っていない。
でも俺は、この人に出会って、此処へ来て、「難しい」と思うことも「楽しい」と思うことも、逃げない一つの理由にできる事を知った。
そして、やっぱり彼には……。
スター
"星"が宿ってるんじゃないかって
ふと思う。
_2024.3.15.「星が溢れる」
「だからそういうわけで…早く終わらせてください、締め切り迫ってます」
「イイハナシダナーで終わるとこじゃないんだね!知ってる!!」
HQ。アカシとただのエース。
3/15/2024, 11:09:48 AM