狼星

Open App

テーマ:エイプリルフール #140

エイプリルフールって嘘付いて良い日なんだって。
僕は知らなかった。
入院している友達に会いに行ったんだ。
「僕、死神が見える」
そんなことを急に言われて、戸惑っているとクククって笑い始めた、友達。
「何、真面目な顔してんだよ。今日、4月1日。なんの日か知らない?」
「知らない」
僕がそう言って首を振ると、友達はフッと笑っていった。
「エイプリルフール、嘘をついていい日なんだぜ? だから死神見えるって嘘! な? そんな深刻な顔すんなって」
バシバシと僕の背中を痛いくらい叩く友達。
その顔は笑っていたけど、何処か苦い顔をしている。
それは本当に嘘だったのか、今ではわからない。

その日の夜。友達はこの世を去った。
急なことで皆、驚いていた。僕だってびっくりした。
でも、妙に納得していた。
友達がいなくなってしまったという事実はそこあるのに、まだ信じきれていない僕がいた。
それはその友達がこの世を去って、何年か経った今でも。
だってそれは、エイプリルフールの夜だったから。
友達がいなくなったなんて信じたくなかったから。
嘘なんじゃないかって。
またひょっこり出てきて、
「嘘だよ」って笑ってくれるんじゃないかって。
今でも期待している僕がいる。
エイプリルフールの夜になると、
決まって彼のことを思い出す。
もういないはずの彼の笑顔が思い浮かぶ。

4/1/2023, 11:00:35 AM