no name_1103

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#20 空は、鰯雲に覆われていた。

青色の白色。バランスの良い美しい色だった。
あの"彼女"みたいに……。

クラスメイトの"彼女"は明るくて、いつも笑顔だった。心優しい人だけど、元気で天然なところもあるのが可愛らしい。
つい、そう思ってしまう。

でも、あの日、廊下を歩いていただけなのに、
見てしまった。一人で苦しんでいるところを。
 同じクラスになってから、俺とどこか似ているところがある気がしていた。同じ雰囲気があるような気がした。

だから、助けたいと。
俺自身、苦しく辛い時でも誰にも頼れなくて、ずっと一人で抱え込んできたから。本当は、平気なんかじゃないのに、平気なふりをするのが笑えるほど、うまくて……。
何も聞いていないけど、いつもの"彼女"の様子から、気持ちが痛いほどわかったから。

そして、「大丈夫…?」と声をかけた。

本当は、「大丈夫?」と言ってはいけない。
答えは、必ず「大丈夫」になるから。

けど、今の俺の立場と"彼女"との関係からして、
知ったようなことはいけないから、ただ、誰でも言ってしまいそうな言葉をかけた。
案の定、"彼女"は「大丈夫」。そう言ったけど、しゃがんでいた身体を起こして、走り出した瞬間にきらっと光が見えた。
それは、目から溢れ出した雫。綺麗だった。

走っていく、その背中にもう一度「大丈夫」と言った。
俺は、助けたいと思った。
………………きっと、"彼女"と同じ命だから。


___#12のもう一つの物語

10/29/2022, 3:04:26 PM