儚夏

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チャイムがなった。
やっとだ。と軽い伸びとともに号令をして教科書を片づける。
6限の終わりを知らせるチャイムだけど、私は今から部活だ。
美術室に着いていつもの窓際の席に荷物を下ろした。
ふと、外を見てみたら陸上部が活動していた。美術室からは外の藤棚に出入り出来るようになっていてちょうど私たちは活動していると窓から陸上部が隣に見える。その中には私の気になっている人もいる。私が窓側の席に座っているのも、ここが1番窓に近いからだ。自然とその彼に目を移すと藤棚の下で休んでいた。今日も話せなかったな、なんて思いつつ眺めてたら友達が来た。いつも部室で絵を描いていてもつまらないからと言ってスケッチブックと鉛筆を片手に一緒に部室を出た。外に出るとクラスメイトが部活をしていた。様々なところから声が聞こえてくる。テニスコート、武道場、音楽室…
目を閉じていても情景が浮かんでくる。

音楽室からはコンクールに向けて練習をしている楽器の音色が飛び交っていた。校舎に響いて外まで聞こえる。そんな音色と一緒に私は、藤棚の方に向日葵が咲いていたから描きに行こう。と伝えて彼がいる藤棚へ向かった。彼を見に行きたいからなんて言えない。

少し歩くと声が聞こえてきた。陸上部とは距離をとって向日葵の前に座り、スケッチをした。
そろそろ戻ろう。私たちは立ち上がり、部室へと歩き始めた。帰り際に横目で彼を探した。するとすぐに目が合った。びっくりして逸らした。もう一度見てみると彼は友達と楽しそうに話していた。

部室に戻り、また窓越しに彼を見た。隣の向日葵にも負けないくらい眩しい笑顔で頑張っていた。

明日は話せますように。

明日はどんな放課後を奏でてくれるのかな。

8/13/2024, 9:33:16 AM