「俺達はずっと一緒だよな?」
「え、いきなりどうしたの?」
その日は僕達の父親が亡くなった日だった。
過労死だったらしい。
止められなかったことへの嫌悪感、不快感。
でも、仕方なかったんだと自分に言い聞かせた。
父親の死は必要な事として気持ちを落ち着かせた。
そんな自分に腹を立てるのはおかしいのか。
あっているのか。
身近な人の死を正当化することなどあっていいものか。
分からない。
わからないけど涙はでてきた。
胸にモヤモヤしたものを抱えながら。
止められない涙を一心に拭った。
僕達の家は父子家庭だった。
母親が出ていったのは僕が一歳の頃、兄が2歳の頃だったと父から聞いている。
新しい男を作って自分から離婚届を差し出してきたらしい。
元々手癖の悪い母親にそこまで疑念は感じなかったと言って父は笑った。
そんな父の顔は思い出せなくなっていた。
今まで一緒にいたはずの、父親の顔。
写真を見ないと思い出せない。
そう言えば最近父親と会っていなかった気がする。
あやふやなまま、でも気持ち悪いとも思わない。
そのくらいどうでもいい事に成り下がった父親との記憶。
僕にとっては今が全てだった。
だが、兄は違った。
部屋に閉じこもるようになり、毎日泣き声が聞こえてきた。
兄は思っていた以上に脆かった。
僕の声など届かなくなった兄。
優しかった兄は一瞬にして無くなった。
たまに部屋から出てきたかと思えば、僕や引き取ってくれた親戚に当たり散らすしまつ。
ときには殴りかかられたことだってある。
兄にとって父親という存在は柱の様なものだったと初めて知った。
その柱が無くなり支えきれなくなった精神はやがて崩壊する。
その先はきっと破滅のみ。
考えたくなかった。
考えないようにしてたんだ。
ベランダ付きのマンション。
こんな所に住んでいるのが悪かったのか。
兄はベランダから身を投げた。
「何で?なんで?ずっと一緒だって約束したのに」
僕はまた身内を亡くした。
ー突然の別れー
追記:次は主人公かもしれません。
終わり方、気持ち悪くなってしまってすみません。
読んでくれてありがとうございました。
5/20/2024, 7:57:45 AM