もち助

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春眠暁を覚えず、処処啼鳥を聞く…

「なんかあなたの口の中から、どぶの臭いがするんだけど。」
俺はそんなはずは無いと言ったが、妻は歯医者に行った方がいいと言う。とりあえず、歯医者の予約をとった。

そこそこ人気の歯科医院だ。
院長先生はレントゲンを見ながら、歯槽膿漏だねと言った。
「歯肉の検査して、歯石取ろう。今日は衛生士さんが歯磨きの方法を教えてくれるから、覚えて帰ってね。」
「はい。」

先生の話を一緒に聞いていた、若くて色白の可愛らしい女性が歯科衛生士さんか。
「よろしくお願いします。まずは鏡を見て、これわかりますか、プラークです。」
彼女が尖った器具で俺の歯をなぞった。
? ? ?
「ここに来る前、ちゃんと歯磨きしてきましたか。」
「してきましたよ。」
「歯磨きできてたら、汚れは取れてるはずなんです。でも、これだけ歯くそが残っているんです。」
俺の目の前に、歯くそとやらを押し付けてきた。
(いやっ~やめてっ)
「これだけ歯くそが詰まってると、臭いもしてきますよ。いつもどうやって磨いてるかやって見せてください。ちゃんと鏡見て。」

仕事なんだからだめでしょう、くそとか言って、ちょっとため口だし。
誰よりもこの衛生士さんの将来を案じてしまう俺。
それに、若い子に歯くそ、歯くそ言われるなんて恥ずかしすぎるわ。涙がこぼれ落ちそう…
「ちゃんとやらないと、歯全部、抜け落ちちゃいますよ。」

夜来風雨の声、花落つること知る多少…

2/16/2024, 9:43:41 PM