私は“ごめんね”使いの名人だった
ごめんね
や
すみません
をよく使っていた
──彼に出会うまでは
彼は“ありがとう”使いの名人だった
私はそんな彼に惹かれたんだ
「資料の件、ありがとう」
「あ、はい……すみません」
そんな感じに私達の関係は始まった
ありがとうに押される日々は私をネガティブから救い出してくれた
いつしか私は“ごめんね”よりも“ありがとう”と言うようになっていた
世界も大きく代わっていた
言葉ひとつで
こんなに世界が変わるだなんて
今までの私には信じられなくて
彼には、ありがとう
昔の私には“ごめんね”
それから、さよなら……昔の私
(2023.05.29/「ごめんね」)
5/29/2023, 5:40:52 PM