突然
後ろから呼ばれる名前
かつて何度も聞いた
刺さるように鋭い声
背筋が凍る
わたしは顔を取り繕い
後ろを見る
そこにはわたしを何度も苦しめた
あの人の姿がある
わたしの顔を見るなり
あの人は顔をしかめて
罵声を浴びせる
まるで降り注ぐ矢のように
その声に身体がすくむ
でも
ここで負けるわけにはいかない
震える手でネックレスを握り締めると
息を吸って言葉を返していく
わたしの態度の変化に
あの人は呆気に取られている
わたしは一息ついて
振り返って歩き始める
背筋を伸ばして、堂々と
振り返ることなんてしない
前を向いて歩く
帰ったら褒めてくれるかな
ネックレスを見つめて
わたしは頬を緩ませた
「あなたがいたから」
6/20/2024, 1:32:12 PM