七紫

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帰り道。
いつも声が聞こえる。

「ヵナたくん…」
「ル亻くん…」

男の子の名前を呼んでいるんだろう。
この声は女の子の声だ。
小学校低学年ほどの幼い声。
田んぼ道を通っている時、必ず聞こえる。
朝もここを通るんだけど、いつも聞こえない。
この女の子が居なくなった(んだろう)のは夕方なんだろうな。

「ュ宀せ亻くん…」
「はルヵちゃん…」

あれ?今日は二人増えてる…。
なんでだ?五人で遊んでたのか?
そろそろ、親に相談した方がいいか…。

「ヵ亻トくん…」
「ひっ、、」

申し遅れました、僕の名前は夏糸です。
『夏』に『糸』と書いてカイト。
姉ちゃんは紬で、父さんは絃。
母さんは…覚えていない。

「厶シしナ亻デ…ヵ亻トくん…」
「…無視してないよ、考え事してたの。」
「君の名前は?なんて言うの?
 なんで僕の名前知ってる?」

後ろにその女の子がいた。
その女の子はどこも怪我しているようではなかった。
だからなのか、余計奇妙に感じた。

「ハしくラ…ナォ…」
「ナオちゃん?」
「そ宀…」

「ユウセイくんの苗字は?分かるかな?」
「ナ亻ト宀…」
「ナイトウユウセイくんだね、おっけぃ。」

「ハルカちゃんは?どうかな?」
「ハナサヵ…」
「ハナサカハルカちゃんね…」

「カナタくんは?
 いつも名前呼んでるよね?」
「ハナサヵ…」
「兄弟かな?ハルカちゃんと。」
「ソ宀…」
「おーけぃ、」

「次。最後ね。ル亻くんの苗字は?」
「ャよ亻…」
「ヤヨイルイくんね…ありがとう。」

全員の名前を聞いたあと、僕は考えた。
この子の親御さんを探すべきか、家に連れて帰るか。
幽霊はその場から離れられないとは言うけど、この子は多分、迷子になってここに来た。
この子は、自分が死んだことを自覚していないと思う。
ならば、探すべきだ。
この子がいなくなった場所を。

そして、親御さんを探そう。




113テーマ【声が聞こえる】

9/22/2023, 10:59:01 AM