僕には兄弟がいた、みんなで雨の日も風の日も小さい段ボールの中でぎゅうぎゅう詰めだ
ある日兄妹の一匹が小さい女の子に抱かれてうちで飼っていい?と聞いて何処かに行ってしまった、一匹分隙間が空いたけどまだ僕たちはぎゅうぎゅう詰めだ
ある日兄妹の一匹がネズミを捕まえたら、それを見た魚屋さんがその兄妹を連れて何処かに行ってしまった、段ボールの中は僕たち四匹でぴったりの広さになった
ある日兄妹の二匹が腰の曲がったお爺ちゃんとお婆ちゃんのそれぞれに抱かれて何処かに行ってしまった、二人は孫が見たら喜ぶねと言っていた、段ボールの中は急に伽藍として、兄妹二匹でくっついて寝始めた
ある日最後の兄弟が、お兄さんとお姉さんの二人に抱かれて何処かに行ってしまった、ペットを飼えるアパートに引っ越して良かったねと言っていた、段ボールの中は僕だけになった、段ボールの中ってこんなに広かったんだ
次の日も、その次の日も、僕は段ボールの中で丸くなっていた、くっつく兄妹がいないとこんなに広くて、こんなに寒くて、こんなに寂しいんだと思った
ある日雪が降ってきて、僕はいつも以上に寒くて震えて動けなかった、身体に雪が積もってきて、案外これも温かいかもしれないと思った、そしたら雪が唐突に止んだ、うっすら目を開けると傘を差した女の人がしゃがんでいた
「私ね、雪っていう名前なの、あなたも真っ白い毛で私みたいね」
そういうと雪は僕を抱いて歩き出し独り言を呟く
「雪が二人じゃややこしいよね、あなたはスノー、これからよろしくね」
僕は雪に抱かれ、その暖かさに兄妹のことを思い出した、みんなこんな気持ちだったのかな、みんな幸せにしてるかな、そんな事を思ってると雪は僕のことをぎゅっと抱きしめた、あぁ、ぎゅってするのは幸せだな、僕は雪に頭を押し付けてもっとぎゅってして貰おうと丸くなった
11/15/2023, 3:17:40 PM