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ある暖かな陽気に照らされた庭に、一人の婦人がいらっしゃった。こんにちは、今日も来てくれたんだね! わたしはそっと婦人に近づいた。婦人はいつもと変わらず、柔らかな笑顔で頭や首を撫でてくれる。わたしが喉を鳴らしながら、少しだけ彼女に近づいたところ、わたしを撫でている手が、いつもと感触が違うことに気が付いた。すると、やっぱり撫でられ心地が悪いかな? というような、少し苦笑気味たはにかみ顔を向けてくる。彼女が身につけていたのは、美しく、素朴なデザインの婚約指輪だった。道理であなたはいつも以上に笑っていたのね。それに関しては嬉しい思いが込み上げてくる。でも、わたしは知っている。彼女は遠方から、長い時間をかけて、わざわざわたしに会いに来てくれていたことを。わたしは、これが最後の逢瀬なのではないかと、不安と焦燥に渦を巻かれた。ややもすると、わたしはおまけのような存在だったのかもしれないけれど、彼女に会える、また笑顔が見れる、ヒトというものと交流する機会が与えられている、そういう日々が、わたしを満足させていたのかもしれない。なんて、少し考えて、急に、遠くへ行ってしまいたくなる。あなたって人は! わたしを置いて、さらに遠くの、愛する人の所へ行ってしまうのね。ただ、彼女はにこにこと、わたしに優しい笑顔を向けてくるだけだった。わたしはこんなに不安なのに……何が言いたいのか、彼女の瞳を見つめて知ろうとした。思い込んだわたしには、その目はとても辛かった。あなたはわたしを見つめるだけで、わたしの気が収まると思ってるのかしら……とんだひとたらしね!

3/29/2024, 3:26:40 AM