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 人の一生はいつ終わるかわからない。そんな言葉がある。それは事実であり、実感したのはつい先程のこと。些細な出来事で喧嘩をして、同棲していた彼女が家を飛び出して外に出ていってしまった。不運なことに、そのまま交通事故により死亡したとつい先刻連絡が届いたばかりである。受けた電話をどうにも消化しきれず、その場にぺたんと力なく座り込む。悲しいのに涙は出てこず、ただ呆然と空いた口も塞がらない。

(─────ほんとうは)


 本当は、真っ先に彼女のことを追いかけてやるべきだったのだ。追いかけて、追いついて、バックハグでもして、自分の気持ちに素直になって謝罪を述べ、「すきだ!」と、「あいしている」と愛を嘘偽りなく叫べていたのなら。愛を叫ぶことか出来たのなら。─────そんな後悔は、もう遅い。

5/11/2024, 2:27:54 PM