エリンギ

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【隠された手紙】

「まじで見つかる気配ゼロじゃないすか!」
「それな。ここまでしますか普通」
「自分は待ってるだけだからねぇ」
「人使いが荒いっつーの」
10分おきに愚痴や悪態が飛び交い、回数は2桁に突入してからだいぶ経つ。
僕らは何をしているかというと、馬鹿デカいお屋敷に隠された手紙を探す仕事である。…失礼、報酬は微々たるものなのでボランティアの部類に入るだろう。
何故?という疑問には「お嬢様の命令だから」としか答えようがない。4人の執事総出で探してもなかなか見つからないのは、手掛かりの少なさも原因だろう。
「ねー今何時ー」
ナギサさんが畳で転がりながら尋ねる。180cm超えのため跨ぐ羽目になる。こう見えて彼は、4人の中では年上の方である。
「12時52分…今53分になったぁ」
マユさんが腕時計を見ながら答える。一瞬女子かと見紛う容姿とふにゃふにゃした口調とは裏腹に、頭がびっくりするほど切れる最年長だ。
「お弁当食べましょーよ!」
引き出しを閉めながらルイが言う。最年少ながらお嬢様の1番のお気に入りである。本人は嫌がっているが。
「よっしゃ、手洗いましょう」
勢いをつけて立ち上がり、3人を連れて洗面所に向かう。
「カエデはちゃんしてんなー」
「ナギサさんがちゃんとしてないんすよね、カエデさん」
「年上になんて口の利き方してんだよ」
「はいはい皆お子様だねぇ」
「僕もですか?」
手紙は見つかりそうにないが、僕はこんな日常が案外好きなのかもしれない。

fin

キープしていたお題でいくつか書いたのでそちらもぜひ。

2/2/2025, 12:36:40 PM