Nanika

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NO.1

あれから随分時間が経った。

君との思い出は全部捨てて来たと思っていたけど、引越しの荷造りの時にひらひらと足元に落ちてきた君と一緒に笑う私。

拾い上げると、今より髪が短い私と思いっきり笑った時にだけ見える片えくぼの君がいた。
当時のことをふと思い出していると、隣の部屋から私を呼ぶ声がして、少しだけ後ろめたく思う。
部屋の隅のゴミ箱にねじ込んで立ち上がったところで、ちょうどドアが開いた。

「何隠してるの?そろそろ行くよ」

八重歯の覗くたずらっ子な笑顔に、私も釣られて笑顔になる。

「内緒」

ちょっと悪い顔をしてそう返すと、彼は大袈裟に目を見開いてえーっと言いつつ、楽しそうな顔を私に向ける。

あの日、最後の日。君と一緒に願ったそれぞれの幸せの、片方は叶ったよ。
どうか私の願いも叶えられていますように。

#君と一緒に

1/6/2024, 1:35:41 PM