書上 創

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ガタンゴトンと揺れる列車の振動と、流れてゆく景色。
自分以外に、乗客は居らず、ただ列車の揺れる音だけが響いている。
少し遠くの座席には、誰かが座っていた跡がある。
…けれどそれだけ、特に知り合いが座ってた訳じゃない。
これがあの文豪の物語の中ならば、誰かと話をして、そしてその誰かとの突然の別れに涙しただろうか。

星屑の川は、そこにはなく…ただ暗い川の水面が通り過ぎてゆく。
俺は、こうしていつまでも独りでこの先も人生のレールの上を進んで行くのだろうか。
そんな事を思いながら、遠い実家に置いてきた父の三回忌に向かう為、列車の中でただ暗く深い夜の景色を見つめている。

2/29/2024, 6:10:41 PM