買い物帰り家に向かう途中、姉から電話がかかってきた。
なんでもないそうだが姉のなんでもないは特に長い。
通りかかった誰もいない公園のベンチに腰を落ち着ける。
いい天気だな…、姉と会話を続けながら青い空を見上げた。
突然ふわりと黒い翼が目の前に舞い降りた。
ベンチから2、3メートル。近い。
いつもいるカラスより若干小ぶり、メスかな?
美しい。艶やかな濡れ羽色に目を奪われた。
しゃべりながら自分を見つめる人間を不思議に思ったのか
カラスはこちらを向いて小首をかしげた。
(くわっ!くゎ・わ・い・い~~~~~!!)
可愛い!あざと可愛い!
吸い寄せられるように立ち上がり、一歩踏み出す。
逃げない。戸惑っているようだが逃げない。
戸惑ってる感が更にあざとい!
胸の高鳴りを抑え更に一歩…
急に無言になった私に姉が何かわめいている、知らん。
だがその目の泳いだほんの一瞬に、軽やかに半回転したカラスは
あわてて青い空へ飛び去ってしまった。
あぁ、行ってしまわれた…
いやはや、久しぶりに魂まで奪われてしまったな。フフッ。
ふいに電話がかかってきた。姉から…いけね、電話切れてた。
今のペナルティ分、更に長い通話が始まった。
(胸が高鳴る)
3/20/2024, 7:29:08 AM