永遠に
ある冬の朝。
うわっ、真っ白。兄ちゃん、起きて、真っ白。
なんだよ、うわっ。真っ白。
冬休みに泊まった親戚の家。窓から見える向こうの山まで、全てが雪に包まれていた。
すげーな。
うん。
朝めし食べたら雪だるま作ろうぜ。
うん。
早く早くと、大人たちを急かして食事の準備をさせ、あっという間に飲み込んで外へ。
うわ、まぶしい。
すごい晴れてるね。これってさ、急いで作らないと雪、溶けちゃう?
そうか。よし、じゃあ早くやろう。俺は下、作るから、お前は上な。
うん。わかった。
ふたりともそっと雪をすくい上げ、両手で固めていく。始めはおにぎりぐらいの玉が出来上がった。今度はそれを、雪の絨毯に転がしていく。
コロコロ。
兄の方は、始めは弟を気にかけながら作業していたが、玉が大きくなるにつれて、自分の仕事に集中していった。
弟は始めから自分のことで精一杯。
よし、できた。おい、こっちはできたぞ。
僕も出来たよ。
弟が両手で抱えた玉を兄の作った玉に載せてみた。
あれ?兄ちゃん、なんか変だね。
お前のが小さいんだよ。もっとおっきくしろよ。
むっ。わかったよ。みてろよ。
弟がムキになって作業を再開した。
コロコロ、コロコロ。
はい、出来た。
先程よりも膨れ上がった玉を、上に載せた。
あー、兄ちゃんの作ったやつのほうが小さいね。
わかってるよ。ちょっと待ってろ。
弟のを地面に降ろし、また転がし始めた。
コロコロ、コロコロ、コロコロ。
ど、どうだ。よいっしょ。ほら、やっぱりお前のが小さい。
なにをー。もう一回だ。
弟がまた転がし始めた。兄の方も、今度は弟の出来上がりをまたずに、自分のを転がし始めた。
コロコロ、コロコロ、コロコロ、コロコロ……。
その頃、家の中では。
あれ?お兄ちゃんたちは?
母親が、一番下の妹にたずねた。
うんとね、ゆき、転がしてる。どっちがおっきくするかって。
まだ、やってるの?
母親はやれやれとため息をついた。
雪の絨毯は、遥か遠くまで続いている。雪だるまの成長に、雪が不足することはない。
全くしょうがない。オヤツだから、って呼んできてくれる?そうしないとあのふたり、永遠に終わらないから。
うん、わかった。まったく、しょうがないでちゅね。
妹が手袋と毛糸の帽子を身につけて外に出ていった。
この時。
お昼前の庭先に、3段重ねの雪だるまが誕生するのを母親はまだ知らない。
11/1/2024, 11:06:46 PM