アイリス

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―待ってて、この場所で。

そう言われたのは何時の日か。
焼きごてを押し付けられたかのようにじんわりと心に永遠に残るその言葉は二十年前に亡くなった彼女の言葉だった。その時はどうも現実を受け止めることが出来ず、じわじわと流れる点滴をただ見つめることしかできなかった。

彼女は私にとって命の恩人だった。私はこの世界の人々に絶望して夜中、はしからとびとりようとしていた。そこに現れたのが彼女だった。彼女は泣き出した。私は不思議だった。どうして今日、今会った人のために泣けるのだろう。この人は優しい人だ。それしか答えは見つからなかった。ああ、まだこの世界には暖かい人がいるのだ。そう思った。

さて、そろそろ寝る時間ではないか。なぁ、×××今日はお客さんが来てくれたんだ。君の話をしたよ。今日もずっと動かずに隣にいてくれてありがとう。ここはとてもいい所からね。木は20年と1度も葉を落とさないから夏も冬もいられる。でも今日は少しばかりいつもよりも寒いね。あぁなんだか眠くなってきたよ。「おやすみ。×××。」














「約束、守りきれたよ。」

2/13/2023, 11:25:22 AM