私が目を開けると、3人の人がこちらを覗き込んでいた。
そのうちの1人がまず口を開いた。
「初めまして、気分はどうかな?」
「?、、初めまして、特に異常はないかと思われます」
「そうかい」
何故だろう。
私が答えた時、奥にいる男女2人が残念そうな顔をした。
異常がないのは良いことではないのか?
「君はアンドロイド、つまり人型のロボットだ」
「私のことは君をつくったマスターだと思ってくれ」
「はい、マスター」
「言語については日本語が既にプログラムされているが、それ以外に関してはほとんど何もしていない」
「これから少しずつ色々なことを経験して、知識などを増やしていってくれ」
「わかりました」
「この2人が君の面倒を見てくれる」
「慣れないこともあるだろうが、彼らに教えて貰いながら頑張ってくれ」
奥にいた2人が私に声をかける。
「初めまして、これからよろしくね」
「よろしくお願いします」
「はは、敬語じゃなくていいよ」
「僕たちは君を子供だと思って接するから、君も僕たちを親だと思って接してくれると嬉しい」
先に挨拶した女性も男性の言葉にうんうんと頷いている。
「わかりました、、じゃなくて、わかった!」
私の言葉を聞いて2人は優しく微笑んだ。
そしてマスターが最後に
「それじゃあ月に一度だけは定期的に来てくれ」
「元気でな、あんまり迷惑をかけすぎるなよ」
と言ったのを聞いて、ベットから起き上がって着替え、荷物を既に持ってくれていた2人と部屋を出た。
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その“アンドロイド”は知る由もなかったが、同じ頃隣の部屋には20歳くらいであろう少年が1人椅子に座っていた。
彼といる隣の部屋には会話やドアの開閉音がはっきりと聞こえた。
「君はアンドロイドなんかじゃないのにね、、」
「あと何回繰り返せば、こんな日を迎えなくてよくなるんだろう」
少し間を置いて少年が呟く。
「僕は何十回、何百回だって君を振り向かせるから」
「また、0からのスタートだ」
彼には、4年前に記憶が1年おきにリセットされてしまう難病を患った恋人がいた。
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『0からの』
2/21/2024, 7:10:26 PM