命なんてちっぽけなものだ。
簡単に奪われてしまうし、本人に本当にその気があるのなら自分自身でなくすこともできる。
本人の手によってなくせるかは置いておいて、それは人間に限ったことではない。
その他の動物、植物にだって命はある。
ひとつひとつの命は小さいものだけれど、その小さな命が沢山集まってこの世界は出来ている。
1日に沢山の小さな命が誕生し、沢山の小さな命が失われていく。
そうしてこの世界は回っている。
広い目で見ればその通りだった。
学者の私は、そんな自然の摂理を疑った事などなかった。
でも今日、始めてそのことに疑問を持った。
最愛の妻を失ったのだ。
もう動くことはない冷たくなった身体。
私は絶望した。
色あせていく世界。
全てもどうでもよくなった。
仕事なんてまともに出来ないし、食事や睡眠だってままならないのだ。
世界にとって小さな命でも、私にとって大きな命だった。
他の人でも同じなのだろう。
他人からみたら小さな命でも、本人の周りの人は大きな命と捉えるのだ。
だから、自分勝手な理由で奪ってはいけないし、日々を大事にしなければならない。
失ってからでは遅いという事を、私は失ってから知った。
小さな命の大きな存在を。
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『小さな命』
2/25/2024, 6:48:47 AM