「子供のままで...いたいな。」
日が落ちて赤く染まった空を背景に、彼女はそう呟いた。
どうしても僕はその寂しそうな横顔が忘れられない。
「どうして?」
...とは聞けなかった。
理由なんてとうに分かっていたのだから。
彼女の意志を止めることは、なんだか、彼女を汚してしまうのと同義な気がして。
もちろん、彼女は大人にならなかった。
よく、人間離れしたような人を「間違えて地上に降りてきてしまった天使なんだ」と言ったりするけれど、
彼女は本当にそうなんだと思った。
あまりに汚い世界に耐え兼ねて、
元の世界へ戻ってしまった。
もう何年も前の話だけど、今でも思い出す君の姿は
永遠に子供のままで。
5/12/2024, 5:12:28 PM