昔々あるところに傘屋の男がおりました。男は最近売り物の傘を度々盗まれるので売り上げがちっとも伸びず、その日の食い扶持を賄うので精一杯で、新しい傘も作れない有り様ですので、気楽な独り身、商売を畳んで当てもなく放浪しようかと自暴自棄になっていました。そこで男は、最近金回りの良くて付き合いの悪い友人の男をだまくらかして、餞別代わりに放浪資金をたんまりいただいてやろうと考えました。貯金のありかを聞き出そうとしたのです。「なあ、おまえ。最近羽振りがいいそうだが、聞いたか?また近いうちにほうき星がくるそうで、今度のはうんとでかいそうだ。みんな無事ではいられないだろう。明日にでも落ちてくるかもしれん。明日世界が終わるなら…今ここでお互いの秘密を打ち明けてみないか。なに、明日でなくとも近いうちにみんな仏さんになるんだからよ」「なんだって?そりゃあえらいことだ。みんな死んでしまうなら、お前におれの秘密を言ってしまおう…実は、一月ほど前から、おまえの作った傘を拝借して商家の娘に貢いでいたんだ…そうしたら、その娘が傘をいたく気に入ってくれて、おれはその家に婿入りしたのさ。本当にすまなかった。でも、世界が終わるなら、許してくれるよな。さあ、おれは白状したぞ。おまえの秘密も教えてくれよ…」「ああ、なるほど…それならおれも秘密を教えよう…ほうき星が落ちるなんていうのはウソっぱちだ!おまえ、このやろう!誰が許してやるもんか!待ちやがれ!」その後ふたりは地の果てまで追いかけっこしましたとさ、ちゃんちゃん…
5/6/2026, 12:04:14 PM