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煙草をふかして、マンションから海を見ているといつも思い出す。
今から何年も前のことだ。
俺が小学生の頃、藤野という友達がいた。会った時から仲良しになった。
一緒に宿題をしたし、喧嘩もしたし、帰った。
今考えてみるととても幸せだったなと思う。
そんな日常も簡単に砕け散るのがこの世ってものだ。
5時限目、ただ退屈で、外を眺めていた算数の時間。
ガタンガタンガタンガタンガタンガタンガタンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン
世にいう「東日本大震災」
花瓶は倒れ、扉は外れ、黒板はバチンと倒れ尽くす。
暫くすると止んだ。しかし安心はできなかった
この学校はとても海に近かった。
すぐに、校庭に集まるようにと放送が。
校庭へ集まる俺たち。どうやら自衛隊が来るまで待つというのだ。
あの先生たち馬鹿だ。そんな暇あるなら逃げろってという単純な話なのに。
その時、藤野がひそひそ声で話した。「おい、バレないように裏山へ走れ」
先生達が慌てふためく中、藤野はすごい力で俺をバチンと押した。
藤野の言う通り、先生に気づかないように裏山へ走った。(音は立てなかった)
裏山の麓の電柱並ぶ所まで走ってきた俺は疲れた。咄嗟に横を見ると、
海から大きな波が盛り上がっているではないか。
すぐに校庭は飲み込まれる!ここもやばい!!
すぐに感じた俺は山頂へ馬車馬のように走った
不安の混じった冷や汗がダラダラと流れ続けた。
ドパァァァン!!ドドドドドド!パパパァァン
遠くから音がする。でももうひたすら山頂へ走る俺。
暫くして、山頂へ着いた。
俺が水筒を飲みながら光景は、黒い水に飲み込まれている校庭。
校舎も2階の方まで飲み込まれていた。
藤野は? 先生は? 友達は?
もう心は只管に焦り続けた。感じたことの無い海への畏れ。哀しみ
涙が止まらなくなっていた。
麓の方まで波は来ていて、危なかった。
遅れていたら呑まれていただろう
その後、夕暮れの時間。
ヘリが飛んできた。救助隊だった
微かな希望が膨れ上がり、「オーイ!」「助けて!」と叫ぶ俺。
気づいてくれて、ロープで助けてくれた。
救助隊の話によると、俺の思った通り
校庭で待機していた人は悉く波に飲まれ、行方が分からない人が多いらしい
じゃあ……藤野は?
今までの思い出がフラッシュバック。
数多の青い思い出に勝るものは無かった。

これが東日本大震災の悲しい体験談である。

7/6/2024, 11:49:18 AM