空気

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僕は、温かい飲み物を2つ持って部屋に戻ってきた。
多分SNSでも見ていたであろう、彼女が




「ねぇ!すぐ近くで、イルミネーションがあるみたい行こう!」
「う~ん、、、そうだね。行こっか」




僕達は、外に出ても寒くないような格好を準備する。
彼女には、お気に入りのニット帽と
ふわふわのマフラーを首に巻いてあげて
僕は、ダウンを羽織る。




「私言ったの突然だったから、屋上から見よう」




彼女のその一言に、少し寂しさを感じながら
“わかった”と返事をした。





エレベーターに乗り、7階のボタンを押す。
ウィーンと上がるエレベーターの中で、僕は思う
(あぁ、これが最後かな…)



“7階です”というアナウンスと共に、開かれる扉





「早く外行こっ!見えるかなぁ~」
「ははっ、よし!行くぞ~」





エレベーターホールから、真っ直ぐ進む
硝子の扉を開けて、外に出ると
案の定とても寒かった。
彼女は、“ひゃー寒い”やら“凍えそう”やら楽しそうに騒いでいる。




「向こうの塀まで行こっか」
「うん!イルミネーション見えるかなぁ!!」





目の前の塀まで近づくと、広がるキラキラとした街並み




「わぁっ!!すごっ…凄いよ!めっちゃ綺麗だよ!」
「うん、すっごく綺麗だね!キラキラしてる」





前で、はしゃいでいる彼女の横にいき
ストンとしゃがむ
そして、彼女の頬にキスをする。





「んふふ、何泣いてるの?」
「ううん、はぁ…ごめん。なんでもないや」
「えへへ、手繋ご」




僕達は手を繋ぎ、目の前に広がる
きれいな景色を目に焼き付けた。




僕達は、もう外にデートに行く事も
ドライブや旅行に行くことも出来ない
そして、クリスマスというイベントも
僕たちにとっては、最後になるのだろう。





「じゃあ、そろそろ病室戻ろ~!ちょっと寒くなっちゃった」
「そうだね、急いで部屋戻ろっか」






僕は、彼女が乗っている車椅子を押して病室まで戻る。









“あぁ、神様。彼女の喜んだ笑顔が見られて幸せです”
“最期に、いい想い出をありがとうございました…”







12/14/2023, 11:13:13 AM