★赤い糸
運命の人。
心から恋に落ちたのは、あの人が初めてだったかもしれない。
出逢ったのは、中学一年生の春休み。
私が通っていた塾に、その人はやってきた。同じ学校だけど、知らない人。
多分一目惚れだったと思う。
とても可愛らしい人だった。
私はその人を見てばかりいた。
目が悪かったから、友達の眼鏡を借りて眼鏡越しのガン見をした記憶もある。我ながら気持ち悪い。
春休みが終わって、二年生になった。
運がいいことに、私はその人と同じクラスになった。
お互い惹かれ合っているのが分かった。目が合うだけで、少し話せただけで、とても幸せだった。
だけど、恋がそれ以上進展することはなかった。
あの人と私は、あまりにも遠かった。
私に彼女と恋仲になる勇気はなかった。
そしてそのまま連絡先も交換できずに、徐々に恋は冷めていった。
ある日友達が、あの人が付き合い始めたらしいと私に言ってきた。
その相手が、よりにもよって私が大嫌いな腹黒きのこ頭おとこだった。
私はあんな男を選んだ彼女に落胆した。
でも気がついた。
どれだけあの男が人間として終わっていても、あいつには私より勇気があった。私はあいつに負けたんだ。
どうして好きの一言も言えなかったんだろう。
私に勇気があったら良かったのに。
恋はとうとう終わりを遂げた。
7/1/2024, 10:11:56 AM