ナグモ

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誰かと遊んでいる夢を見た。 

今日のご飯何かなぁ

あぁそうだ、今日の天気は曇りだね。

なんて、中身のない話をしながら遊んでいた。

僕はあまり曇りは好きではないけれど。強いて言うなら嵐とか雪とかが好きかな。

あ、僕さ、今度…

「天気の話なんてどうでもいい。」

……

「違う、違うんだ✕✕✕。僕が、僕が話したいのは__」

そこで覚醒する。

あぁ、またこの夢か。

しつこいなぁ。

夢の中の人物と親しげに話している俺。

いつまでもいつまでも付き纏って離れない。

子供の頃、誰かに何かを言われた気がする。でも思い出せない。

時計を見ると針は7時14分を指していた。

家に飾ってあった、いつ誰と撮ったのかわからない写真と目が合う。

寝起きで頭がボーッとしていたのでしばらく見つめ合った。

その後、着替えていつ付けたのか分からないキーホルダーを揺らしながら学校へ向かった。

教室につくと、みんなが俺を憐れむような目で見た。

もう慣れたけれど。

席につくと、タイミングよく先生が教室に入ってきた。

「はーい皆席についてねー。」

出席を取って、授業が始まる。

今日の時間割は…、…面倒臭い授業ばかりだ。




何とか乗り越え、昼休みだ。

俺の数少ない友達であり、親友である和真(かずま)が話しかけてきた。

「よっ、マサキ!」

…相変わらずテンションが高い。

「一緒に昼飯食おうぜ!」

「…いいけど」

「相変わらずお前はテンション低いなぁ?」

正直鬱陶しい。だが、これでも大事な親友だから相手するか…

「おーい、聞こえてんぞー」

…口に出てしまったみたいだ。

「まぁそれは置いといて、さっさと食おうぜ。」

「あぁ。」

それからしばらく経って、半分くらい食べ終わった頃。

「…なぁ。」

急に真剣な顔をして喋り始めた。

「"あいつ"のこと、どう思ってる?」

まるで、長年の秘密を打ち明けるように。

「…あいつって誰?」

「…」

和真は俯いたが、少し経って、

「そっか。」

と一言だけ言った。

「なぁ、あいつって誰なんだよ?」

俺が食い下がると、和真は、

「本当に覚えてないんだよな?」

「あぁ。」

「分かった。」

詰まってはいたが説明しだした。

「あいつっていうのは…イツキだよ。」

「…伊月?」

「お前、その時近くにいたから、ショックがデカかったんだろうな。」

「その時?」

「あー、やっぱ覚えてないか。
イツキ、お前と遊んでる時にトラックに轢かれて死んだんだよ。」

「…は?」

「お前のすぐ隣をトラックが通って、イツキが轢かれたんだ。」
 
理解出来ない。否、理解したくない。

段々と思い出されていく記憶。

あの日の記憶が蘇る。

「ねぇ、真咲。僕が話したいのは、いつだってそんな事じゃないんだよ。」

あぁ、なんて滑稽なんだろう。

「君の話ばかり聞かされても、何も楽しくない。」

「ねぇ、待ってよ。」

「なに?もう君の話は聞きたくないよ。」

「違う、違うんだ伊月!僕が話したいのは…!」

こんなケンカなんてしなければ

「え?」

キキ"ーーーーーーッ!!

ブレーキの音が鳴り響く。

ドンッ

都合良く忘れて自分を守るなんて、馬鹿だなぁ。


酷い吐き気と目眩に襲われながら、俺は意識を手放した。








誰かと遊んでいる夢を見た。








「またか…」

和真は独り言ちる。

「やっぱ、話さない方があいつのためなのかもな…
…次もまた忘れてるんだろ。」

和真は俯く。しかしすぐに顔を上げた。

「さてと、こいつ家に運ばねぇと。」


残酷だ。

その声は誰にも聞かれることなく消えた。


お題『天気の話なんてどうだっていいんだ。僕が話したいのは、』

6/1/2023, 4:45:54 AM