そこは私の知らない世界だった。
目が覚めると、無音の部屋に
時計の針の音だけが響いている。
刻む音がやけに大きくて、
私の心臓はドクドクしている。
この音を聴きたくない。
自分の人生を前に進めたくない。
何もしたくない。
何もできない。
目なんか覚めなければいいのに。
そんな感じで、毎回、目が覚めては、
絶望の日々だった。
それでも目を覚まさずに寝続ける事ができないのは
生きている人間の定めで、更に絶望した。
そうか…私は生きているのか…。
―ある日、目が覚める事に何も思わなくなった。
そして、さらにある日
私は時計の針の音が気にならなくなった。
そして今は、目が覚めると、
さて、今日は何をしようかなと
思う私がいる。
人間の回復力はすごい。
#目が覚めると -15-
7/10/2023, 10:22:59 AM