ここは僕が生まれ育った街。
この街は20XX年に放送されたアニメの舞台で、よく聖地巡礼目的で観光客がやってくる。
確かにこの街は良い所がたくさんあると思う。
でも『そこまでか?』と思うときがある。
ある時聖地巡礼をしにきた1人の男性と出会った。
その男性は、そのアニメを見てから人生が変わったらしい。
そしてアニメのお陰で、この世界で1番良い街に出会ったという。
それがこの街だ。
僕自身、今まで過ごしてみてそんな風に思ったことなど1回も無い。
すると男性は言った。
「身近なものこそ良さを見つけにくいんだよ。自分はただの空き地だと思っていた場所は、子供たちからしたら、とても素敵な場所なのかもしれない。この街だってそうさ。君にとって何も無い普通の街に見えるかもしれないけど、僕にとってはこの街の全部が輝いて見えるんだよ」
僕はとりあえず頷いた。正直全く分からない。
「せっかくだから君に1つ、オススメのアニメでも紹介しようかな」
すると男性はリュックから複数のDVDを取り出した。
「いつもそんなに持ち歩いてるんですか?」
「いや今回だけだよ。聖地巡礼した時にアニメを見返せば、ここがあそこか!ってなって楽しんだよ」
「はい。これどうぞ」
男性は1つのDVDを僕に渡した。
「これは日常系のアニメで面白いよ。君くらいの年は結構ラブコメとか好きなんじゃない?」
確かに僕の学年は漫画やアニメでラブコメを読む男子もいる。
でも僕はあまり興味が無かった。
「僕あまり興味なくて……」
「何事も興味がないで終わらせちゃダメだよ。新しいものに出会えば出会うほど、人生は楽しくなるからね」
そしてその言葉を聞いてから5年が経った。
あの後アニメを見てドハマりした。まさかこれほど面白いとは。
そのアニメを見てから人生が変わった。
アニメを好きになって、今度はアニメの声優が好きになった。
そしてそのアニメの舞台の街も好きになった。
いつか仕事してお金貯めて絶対にあの街へ行く。それはいつしか将来の夢になっていた。
そして就職しお金を貯め、僕は無事に聖地巡礼をすることができた。
「ここがあのアニメの舞台か……」
今にも涙が溢れそうだ。
数年前あの1人の男性に出会ってからすべてが変わった。いや男性が変えてくれたんだ。
街を歩きながら今までの思い出を振り返っていると……
「お兄さん何かこの街に用でもあるの?」
1人の中学生が話しかけてきた。
「聖地巡礼をね」
「こんな街に?」
「君も好きなものがあるだろう?でも他の人はそれを良い評価をしないかもしれない。人によって価値観は変わるんだよ」
「ふーん」
「君もなにか好きなものから興味を広げてみな」
「例えばアニメが好きだったら、そのアニメの声優さん、アニメの舞台、なんならアニメーションとか色々興味を広げられる。興味がないで何もかも終わらせないで。自分の世界を広げればきっと楽しいよ」
この言葉は色んな人に届いてほしい。そういう願いを込めた言葉だった。
完結
1/28/2023, 11:11:13 AM