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【空が泣く】


神様のところで雨を降らすのが、今の仕事。その前のことはよく分からない。気づいたら雲の上にいた。
「雨、降らしてみる?」
神様に聞かれて、ジョウロを渡された。
(これでまけばいいの?)
雲の上からは色んなものが見えた。
「いい人がいたら、教えてね」
神様はそう言ったけど、それ以上は教えてくれない。だからどうやって探すのか、「いい人」がどんな人なのか、探してどうするのか分かんなかった。でもどうも、「いい人」が見つかったら、雲の上にはいられなくなるらしかった。
(ずっとこのままじゃダメかな)
神様のお手伝いで、雨を降らせる。気楽で、結構自分向きかもと思っていたのに、さよならしなきゃならないのは、残念だった。だから、そんなに熱心に探してたわけじゃない。でも、「いい人」は見つかった。ずっと呼ばれていたような、不思議な感じだった。
「神様、いい人、見つけた」
報告すると神様は、「ああ、よかったね」と、にっこり笑った。
「そうだ。ジョウロ、持っていってもいい?」
「まだまだ使うからね、置いていって」
「また、誰かが来るの?」
頷いた神様がじっとこちらを見る。
「行ってらっしゃい」

9/17/2023, 7:43:58 AM