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【月夜】

大学1年の頃、僕たちは出会った。彼女とは同じサークルに入り、交流を重ねた。彼女は器用ではないけれど、明るく笑顔が素敵な女性だった。自分でも分からないうちに惹かれていった。彼女には伝わらないだろうけど。友達以上には進めていなかった。
今日はサークル仲間と集まり、飲み会のテンションでいろんな話題で盛り上がった。時計を見ると遅い時間になっていた。集会はお開きになり、皆に挨拶をして別れた。彼女の帰路が自分の住んでいるアパートの方角と同じであり、一緒に帰ることになった。空を見上げると、綺麗な夜空に月が出ていた。今日は晴れており、満月に近い円形の月がくっきり見えた。彼女とは手が届きそうで届かないもどかしい距離で並んで歩いていた。手を伸ばしたいけれど、気恥ずかしさとそんな勇気はなかった。そんな時 不意に彼女は駆け出し、10歩分先で立ち止まった。そして僕の方へ振り返ると、
「今日の月は今までで一番綺麗だね」と手を差し出して笑った。
月の光に照らされて君の笑顔は特別に綺麗に見えた…



大学1年の頃、私たちは出会った。彼とは最初友達の関係だった。交流するうちに少し頼りないけど、彼の優しく努力家な一面を知った。そして自然に惹かれていったと思う。でも友達の領域から一歩を踏み出すには勇気が持てず、この関係を崩したくなかった…

今は美しい月夜の中、二人並んで歩いている。手が触れそうで触れない距離。でも今なら一歩踏み出せるかもしれない。臆病な私は月に勇気を貰った気がした。彼に少しでも伝わればいいなと淡い期待を抱きながら密かな気持ちを伝える。
「月が綺麗ですね…(=I LOVE YOU)」
すると彼は私を見つめながら呟いた。

「君も綺麗だよ…」

綺麗な月が見守るなか、
月明かりに重なる二人のシルエット

3/7/2024, 2:12:11 PM