Seaside cafe with cloudy sky

Open App

【喪失感】

◀◀【胸の鼓動】からの続きです◀◀

⚠⚠ BL警告、BL警告。誤讀危機囘避ノタメ、各〻自己判斷ニテ下記本文すくろーるヲ願フ。以上、警告終ハリ。 ⚠⚠


















「それで、ジュノーはまだ捕まらんのか」
スマートフォンのスピーカーから聞こえる島国言葉の、期待外れな返答にうんざりした溜息をこぼすと、ジェラルドは彼の母国である今大国の新大陸訛りで尊大に返した。
「休暇など返上して至急社に戻ってこなければ即解雇だと、脅してでもいいから連絡をつけろ。頼むぞ」
必死に言いすがる電話の相手の声を無視してそれだけ言うと通話を切る。そして高速列車の駅を出てタクシーに乗り、なじみの店へと走らせた。およそ二十分ほどの距離、後部座席にどっかりと身を落ち着かせ、流れゆく街の眺めは目に入れず道行く人々だけに焦点を当てて、左右前方の車窓を忙しなく見渡しながら目的地へと移動する。もう二年も会っていない、忽然と行方をくらました彼の想い人の愛しい姿を探し求めているのだ。その人物は以前、今向かっている店で働いていたが、ジェラルドにはなにも告げずに消えてしまった。俺の気持ちを分かっていながら、なぜ ―― いまだに未練断ち切れず喪失感に胸を痛め、仕事で西へ行くたびにその店へ足を向けては思い出を偲び、万が一の邂逅を願いながら人混みの中に目を走らせる。今回もやはり幸運には恵まれることなく、到着した想い人のいない店で虚しい時を過ごすこととなった。仕方がない、真面目に仕事をやっておくか ―― ここでも新大陸言葉でオーダーを済ますとテーブルにノートパソコンを開いてメールを確認する。受信ボックスには先ほど電話に出た担当者による「ジュノー氏休暇中のための不在による代理人にての措置」と題された最新メールが届いていた。あの野郎……気に食わんやつだがすこぶる有能だから、今回の急な打ち合わせも当てにしたというのに、クソッ。腹の中で毒づきながらメールを捌いていく。―― 突然休暇なんぞ取りやがって、連絡もつかせずにどこで何してやがるんだ ―― 運ばれてきたビエールとクラブハウスサンドを口にしながらジェラルドは、仕事とプライベートともにツキのない憤りをパソコンのキーに叩きつけていった。

▶▶またどこかのお題へ続く予定です▶▶

9/10/2024, 12:01:48 PM