「遠い日の記憶」
僕は記憶力が悪いわけじゃなかった。
でも、ある日を境に物忘れが多くなった。
いつしか自分の記憶すらあやふやになってしまった。
時には夢と現実の区別がつかなくなってしまったり、妄想なのか現実なのか分からなくなってしまうことがあった。
思い出そうとすると頭が締め付けられるような痛みに襲われ、息切れや吐き気すら催すものだから、思い出さないようにもしていた。
だから、僕の「記憶」が正しいのか判別はできない。
でも、知ってるんだ。
それは、自分から嫌な記憶に蓋をしてからだって。
それは死なないための防衛反応で、
僕が生きていくための術だった。
それでも、心に負った傷だけはうまく隠せない。
7/17/2023, 3:49:37 PM