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「黒猫スカルのひととき」

「あ!コレ可愛い〜」

女子高生の柚叶は人気キャラクターの

スマホゲームを見つけました。

「ダウンロードしよっと」

柚叶はそのゲームをダウンロードしました。

「良いのかな?不幸をもたらす物だったらどうするの?」

柚叶は声がする方を向くと、

黒猫がちょこんと座っていました。

「うわっ!喋った。どうやって家の中に入ったの?!」

「僕は普通の猫とは違うんでね。

 あ、自己紹介まだだった。僕はスカル」

「私は柚叶…って、どうしてモクマが危険なのよ?

 可愛いクマじゃん」

「熊は元々人を襲う動物だからね。

 テディベアのイメージがあるから親しみやすいとか

 人間は勝手に思い込むんだろうけど」

「えーと、私、ゲーム苦手なんだよね…

 コレ、本格的なゲームじゃん!」

柚叶はモクマのゲームを進めていました。

「無視するな!」

スカルはカチンと来ました。

「そうだ!彼氏に手伝ってもらお」

「ダメだよ、彼氏を巻き込んじゃ。

 女子がやるゲームは男子は嫌がるんじゃない?」

スカルは柚叶を止めました。

「言っとくけど、得体の知れない生き物の言う事なんて

 信用出来ないし。それじゃ!」

柚叶は家を出ました。

「おやおや、大丈夫かな…?」

スカルは柚叶の後を追いました。

柚叶は駅に行き、彼氏に会いました。

「蓮人君、お願いがあるんだけど…」

「何?」

蓮人は嬉しそうでした。

「モクマのゲーム手伝って欲しいんだけど」

「モクマ?モクマってあのゆるキャラみたいな?」

蓮人は凍り付いたように止まってしまいました。

「ねぇ、お願い!」

「うーん、柚叶ちゃんのお願いなら仕方ないな。

 手伝ってやるよ」

「良いの?ありがとう!」

スカルは、高校生カップルを見ていました。

「典型的なバカップルだね。今日はこの辺にして帰るか」

スカルは帰りました。

数日後、悲劇が起きました。

蓮人は同級生に刃物で刺されてしまい、

病院で息を引き取りました。

下校の電車で柚叶は泣いていました。

「ううっ…ごめんなさい、ごめんなさい…」

「柚叶は悪くないよ!」

友達は柚叶を慰めていました。

「偶然が重なって起きた事件。

 クマは悪くないよ。

 悪いのは…居るのかなぁ?

 クマが襲うのは自然の摂理。

 クマが悪者だって思うのは

 人間が勝手に決めた思い込み」

電車の網棚の上でこっそり見ていたスカルは

姿を消しました。

12/1/2021, 8:24:58 AM