汚水 藻野

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「三日月の日の夢は必ず悪夢なんだって」
昔から、そう、言い伝えられていた。

何か黒い影みたいなものがこちらへ来いと手招きする。言葉に誘われそのまま私は歩く。
「…ねえ、たとえ悪夢でもいいから、私に夢を見させてくれない?」
唐突な言葉で驚く黒い影は数秒止まって、返事もないまままた歩き続けた。
「できれば死んだあの人と会わせて欲しい」
少し躊躇ったような、拒否するような態度を示してから少し経ち、了承したと頷く。
「…あなた、本当に悪夢なんて見せるの?
ほんとはそういう商売して、此処に来てもらいたいんじゃないの?」
決してそれはない、と強く横に振る黒い影。
「…そ。でもこれだけは言っとく。

………ありがとう。」
三日月と言う名の小さな島、その主に。

_2024.1.9.「三日月」

pkmn。

1/9/2024, 2:18:16 PM