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What?

あれは、まだ私が幼い頃の記憶。
親戚の方が亡くなった。すぐ近くにいた親戚。
朝方だったのを憶えている。あまりの出来事がその時は理解できなかったが、その晩は悲しんだ。

葬儀当日。多くの方々が参列しているなか、私は前から三列目の左から5、6番目辺りに座って葬儀を聞いていた。
葬儀が始まって15分は経っていただろう。
足が痺れてきて動けなくなっていた時だ。
葬儀場の左右にある隅のスピーカーから急に
 『ABCのうた』が流れ始めた。
私は足の痺れに耐えながら、何故今ここでこの音楽が、と思いながら隣に座っていた弟に顔を向けた。
弟も気がついていたようで二人で顔を見合わせながら笑いを堪えて葬儀を聞いていた。
周りを見回したが、参列している方々はお経に集中しており全く気がついていない様子だった。

必死に笑いを堪えながら痺れた足が治まるまでの時間は長かったような気がした。曖昧だが今でも忘れられない。
葬儀終了後に両親に音楽の事を話したが、耳に入ってきておらず、誰も知らないと。

何故『ABCのうた』だったのかは謎であり、本当に不思議な出来事だったし、不可解だったのは事実である。

5/23/2023, 12:32:29 PM