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「明日、もし晴れたら」
「うん」
「どこへ行こうか」
お日さまを見なくなって、もう何日になるのだろう。このやり取りも何度目か。
「晴れたら、何をしたいかな。たくさんありすぎて困っちゃうね」
明日は晴れますように。
毎日、毎日、毎日、祈りながら眠るのに、神様はちっともお願いをきいてくれない。
「これじゃあ、カビが生えちゃうね」
「カビは嫌だな」

「あきらめちゃダメだよ。願いは絶対に叶うからね。願い続けよう? あきらめちゃ……ダメだよ」
つまんない冗談とか散々言ってたくせに、昨日の夜は、ゼンマイの切れたオルゴールみたいに言ったっきり、黙ってしまった。
「ねえ、カビちゃった?」
返事はなかったけれど、聞こえてるだろうって思って続ける。
「晴れたら。一緒に海に行こう。電車に乗って。で、歩いて歩いて。バカみたいに歩くんだ」
きっと気分がいいから。
「海じゃなくてもいいよ。観覧車に乗るってのはどう? 高いところ大丈夫かな」
ずっと一緒にいたのに、知らないことだらけだって、気づいた。
「どこに行こう? 何がすき?」






「ママぁ、このてるてる坊主さんたちどうしよう」
「えー? どうする……って?」
「お願いかなえてくれたら、なんかあげるって」
「あぁ。お歌にあるねぇ。晴れたら、銀のすずあげよって」
「じゃあ、銀のすずあげようよ」
「今、おうちにすず、ないから、またね」
「ふぅーん。てるてる坊主、またね」

8/1/2023, 10:46:04 PM