貝殻灰色の砂浜に打ち上がった貝殻は、白くはあるけれど薄汚れていた。何度も波に揉まれたのだろう、ひびが入ったり縁が欠けていたりする。「そんなもん拾ってどーすんの」しゃがみ込んで見ていると、頭上から声がした。パーカのポケットに両手を突っ込んで、つまらなそうに睥睨する。「別に。死んじゃったんだなって思って」「何が」「貝」ざぱんと波が跳ねた。「ふうん」水平線を見つめて、彼はポツリと呟いた。「海は墓場だね」
9/11/2023, 3:14:01 PM