酔生夢死

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『空を見上げて心に浮かんだこと』7

男は日傘もささず、かと言ってなにか涼し気な格好をしている訳でもない。ただじっとこの炎天下の中空を見ていた。何が目的なのか、目的なぞないのかそれは男にしか分からない。異様な男を前に話しかける大人は居らず子どもが近寄ろうとしてはやめるを繰り返している。

男の周りには様々な差入れが置かれた。水の入ったペットボトルやスポーツドリンク、更にはクールボックスに入った冷やし中華とアイス見た思い思いに男の周りで置いていった。男はそれらを一瞥するとまた上を向いた。差入れもといお供えは明日になるうちには消えていた。

男は相も変わらず空を見ていた。1人の青年がやってきた。2人分のペットボトルとお弁当を抱えて。男は口を開いた。「何か用か」青年は快活に「はい!ここで立ち続ける理由を聞かせてくれませんか」と答えた。しばらく沈黙があった。

男は然も面倒くさそうに答えた「なんの意味もないよ」男のできる限りの冷たい声だった。青年は「なんの意味もないならここにいても問題ないよね!」それは嬉しそうに言った。

二人は空を見ていた。何も無い何も流れない空を見ていた。男は青年のことを気にかけようとするがそんな心配は徒労に終わると思いいつも息を吸った段階でやめてしまう。青年は周りのことなど何も気にせず2人分のご飯を買ってきては男のそばで同じように空を見る。

青年は空を見ていた。遅れてきた男は2人分の飲み物と弁当を持ってきた。いつもの反対だと2人を含めた周りの人間もみなが思った。「ありがとう」と青年が言った。男は青年に目をやったあといつも通り空を見上げた。

青年は空を見ていた。一人で見ていた。野次馬のひとりが「あの男の人は?」と聞くと「知るわけないだろう?」と、当然のように帰ってきた。そんな冷たい答えを聞いた野次馬達は掃除機で履かれたように散り散りになった。僕がいちばん知りたいよと誰にも聞こえない声で呟いた。

続きがわからない

7/16/2023, 6:01:29 PM